こんにちは、皆川です。
今回は住宅ローン減税の改正についてお話します。
2021年12月10日に「令和4年度税制改正大綱」が発表されました。
「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」(以降、「住宅ローン減税」)では、控除率、控除期間、年末残高の限度額、所得制限などの見直しがされています。
(この案は、3月の国会で審議が通れば4月から施行されますので、内容は諸事情により変更される場合があります。ご承知おきください。)
今回、住宅の性能で明暗が分かれる結果になりました。
「中古住宅」は、新築の長期優良住宅などの「認定住宅」と最大控除額を比較すると、最大約300万円差があります。
また、住民税の控除限度額についても見直しが入りましたので、併せて解説します。
目次
改正内容について(控除率・控除期間・所得制限)
細かすぎる住宅の種類と年末残高の限度額の関係
総控除額の最高額比較
住民税の改正
まとめ
改正内容について(控除率・控除期間・所得制限)
改正で延長や減額などいろいろありますが、とりあえず、特例が終了にならなかったことに安堵された方も多いのではないでしょうか。
そもそも住宅ローン減税の特例は、消費税率引き上げに伴う反動減対策としての借入限度額の上乗せ措置でした。
今回、これを終了し、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅性能などに応じた上乗せ措置を講ずるということです。
向こう4年間は続きそうですが、徐々に条件などが厳しくなっていくようですので、住宅購入をなんとなく先延ばししている方は、これを機に検討を始めてはいかがでしょうか。
では、改正内容を見ていきましょう。(表1参照)
控除率は、1%から0.7%へ引き下げられました。
「住宅ローンの払った年間利息分のみ」なども言われていましたが、一律0.7%はわかりやすいですね。
控除期間は、10年(一定要件を満たせば13年)から、新築・買取再販は13年、既存住宅は10年になりました。
「一定要件を満たせば13年」とは、請負契約の期限が新築なら2021年9月30日まで、建売等は2021年11月30日までに契約が済んでいれば、特例として10年が13年になるというものです。
既存住宅とは、いわゆる中古住宅で、一度は誰かが住んだ住宅や住宅完成後一年以上が経過した住宅を言います。
新築と中古で3年の差があるという事は、国は新築推しということですかね。
所得制限は3,000万円から2,000万円に減額されました。
会社員で3,000万円以上の年収の人はかなりレアだと思っていましたが、減額された2,000万円も対象となる人は少なそうと思うのは私だけでしょうか。
【表1.改正案】
改正前 | 改正後 | |
控除率 | 1% | 0.7% |
控除期間 | 10年(要件満たせば13年) | 新築13年、既存住宅10年 |
所得制限 | 3,000万円 | 2,000万円※ |
所得制限の※は、床面積40㎡以上50㎡未満である新築住宅・買取再販、2023年12月31日以前に建築確認を受けたものに限って、1,000万円を超える年については適用しません。
細かすぎる住宅の種類と年末残高の限度額の関係
購入する住宅の種類について、2021年の住宅ローン減税の要件では、新築も中古も「一般住宅」か「認定住宅」かの2択でした。
認定住宅とは、長期優良住宅や低炭素住宅を指します。
今回、新築に限り4択に細分化されました。(表2参照)
認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、一般住宅の順に限度額が減額されることになるようです。
【表2.新築の年末残高限度額改正(案)】
改正前 | 2022年~2023年入居 | 2024年~2025年入居 | |
認定住宅 | 5,000万円 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | ― | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | ― | 4,000万円 | 3,000万円 |
一般住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | 2,000万円※ |
一般住宅の※は、2023年までに建築確認をしているものに限ります。
次に、中古住宅の改正です。
表3にまとめた通り、何も変わりません。
家の性能による細分化も期間の延長もないので、国は新築推しであることがわかります。
【表3.中古の年末残高限度額改正(案)】
改正前 | 2022年~2023年入居 | 2024年~2025年入居 | |
認定住宅等 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
一般住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 |
総控除額の最高額比較
では、改正案で総控除額の最高額を比べてみましょう。(表4参照)
一番高額の新築認定住宅と最低額の一般住宅では約300万円の差が生じます。
実際、認定住宅など性能の良い家は一般住宅と比べるとその分高額になります。
国は、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指しているので、できるだけ高性能な住宅を早く建ててもらいたいという気持ちが数字にダダ漏れですね。
この試算から2022年~2023年に購入した方がお得に感じます。
また、中古については、いつがお得…がないので、控除率0.7%、控除期間10年という分かりやすさが最早メリット、無いよりマシくらいに見えます。
【表4.総控除額の比較】
改正前 | 2022年~2023年入居 | 2024年~2025年入居 | |
認定住宅 | 500万円 | 455万円 | 410万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | ― | 410万円 | 319万円 |
省エネ基準適合住宅 | ― | 364万円 | 273万円 |
一般住宅 | 400万円 | 273万円 | 140万円 |
中古認定住宅等 | 300万円 | 210万円 | 210万円 |
中古一般住宅 | 200万円 | 140万円 | 140万円 |
住民税の改正
住宅ローン減税は、年末の借入残高に控除率を乗じた金額を所得税と住民税から控除するというものです。
所得税で控除しきれなかった額は翌年に確定する住民税で控除します。
住民税には控除限度額があり、この金額についても改正がありました。(表5参照)
住民税の「7%まで」が「5%まで」に減、控除の最高限度額136,500円が97,500円に減額です。
各家庭で所得税や住民税の金額は異なりますので、それにより実際の控除額は異なります。
よって、今回の改正で、2021年までの住宅ローン減税とあまり差がない場合もあると思いますので、ご自分がいくら控除されるのか試算することをお勧めします。
【表5.住民税(案)】
改正前 | 2022年~2023年入居 | 2024年~2025年入居 | |
控除率 | 7% | 5% | 5% |
限度額 | 136,500円 | 97,500円 | 97,500円 |
まとめ
・2021年12月10日の「令和4年度税制改正大綱」発表
・住宅ローン減税の控除率、控除期間、年末残高の限度額、所得制限などを改正
・控除率 : 1% → 0.7%
・控除期間 : 新築13年、中古10年
・年末残高の限度額 : 新築3,000~5,000万円、中古2,000~3,000万円
・新築に限り細分化(認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、一般住宅)
・所得制限 : 3,000万円 → 2,000万円
・総控除額の最高額を比較すると一番高額の新築認定住宅と最低額の一般住宅で約300万円の差が生じる
・住民税控除の控除率、限度額を改正
・住民税控除率 : 7% → 5%
・住民税控除限度額 : 136,500円→97,500円
いずれにしても、税金が戻ってくる、得しているということをお忘れなく。
各家庭で住宅購入費や返済の仕方、所得税や住民税は異なります。
つまり住宅ローン減税の控除総額は各家庭で異なるということです。
実際にシミュレーションしてみましょう。
自分達がどれだけ得をしているか明確にすることは、今後の予算検討にも役立ちます。
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