【住宅ローンの変動金利】複雑過ぎるその仕組みを徹底解説!

【住宅ローンの変動金利】複雑過ぎるその仕組みを徹底解説!

今回は、住宅ローンの返済中に会いたくない変動金利型の未払利息についてお話します。

住宅ローンで失敗しないためにはその仕組みをしっかり理解して、自分達が納得した返済計画を立てることが大事です。住宅ローンの返済が始まってから、「そんなこと知らなかった」と嘆くことのないよう、ローンを組む前にしっかり勉強しておきましょう。

住宅ローンは、「低い金利」で「少ない借入額」を「短い期間」で返すのが理想です。

今「低い金利」代表と言えば「変動金利」です。でも、ローン返済など関係のない日常を送っていると「金利が変化するのが変動金利でしょ?」くらいのイメージしかないと思います。それはそれで正しいのですが、いろいろ決まりごとがあって実は複雑です。

そして、冒頭にあるように、住宅ローンの返済中に会いたくない未払金利が発生してしまうと、場合によっては借入額が増えてしまうことになります。

では、複雑な変動金利について詳しく見ていきましょう。

目次

1.変動金利の決まり方

2.変動金利型の特徴

2.1 借入時の金利が約束されているのは最初の6か月間だけ

2.2 返済額の見直しは5年ごと

2.3 金利の見直しは半年に1回

2.4 返済額の変動幅は従前の返済額の1.25倍まで

3.変動金利型を選んで良いのはこんな人

4. まとめ

1.変動金利の決まり方

変動金利は一般に、短期プライムレートに連動します。

短期プライムレートとは、金融機関が優良企業に一年以下の短期で貸し出す際の最優遇金利のことです。このレートは金融機関同士がお金を貸し借りする時の「市中金利(無担保コールレート翌日物)」に連動し、この市中金利をコントロールしているのが日本銀行の「政策金利」です。

住宅ローン金利は、一般的に新短期プライムレートを基準として、そこに各金融機関のコスト(約1%)を上乗せして金利が決定され、企業や個人に対してのさまざまな金利を決定しています。このようにして基準金利が決まります。

基準金利は一般の商品で例えるなら定価、相場に当たります。「店頭金利」とも呼ばれたりします。

これに対して、広告などで派手に宣伝している金利を「適用金利」と呼びます。「優遇金利」「実行金利」とも呼ばれます。

条件を満たす(ローン審査に通過する)ことで、基準金利から一定の金利が優遇される金利の事です。毎月1日に発表される適用金利は、最大に優遇された場合の数値です。つまり、自分達がその最大優遇金利で借りられるかは、審査次第ということになります。

例: 基準金利 2.475 % - 最大優遇 2.000 % = 適用金利 0.475 % 

変動金利を適用した返済方法を「変動金利型」と呼びます。

2.変動金利型の特徴

変動する金利への不安を少しでも和らげるためか、親切そうな設定がいくつかありますが、実はそれほど優しくない印象です。細かい設定はよく理解しておきましょう。

2.1 借入時の金利が約束されているのは最初の6か月間だけ

金利は住宅ローン契約時の数字ではなく、融資実行時点での数字が適用されます。

そして、変動金利型の場合、そこから6か月間その金利で返済額が計算されます。

低いと思っていた金利は、最初の6か月しか約束されていないのです。

2.2 返済額の見直しは5年ごと

住宅ローンの月々の返済額は、5年間変わりません。いわゆる「5年ルール」。

金額が変わらないのは、生活費に変動がなく、安心していられそうです。

でも、前出の「金利は最初の6か月間だけ」を知っていると、その後4年半はどうなっているのだろうかと心配になります。

2.3 金利の見直しは半年に1回

金利は半年に1回見直されます。

ですから、「借入額の金利は最初の6か月間だけ」となる訳です。

返済額は利息と元金を足したものです。見直しの度に返済額の内訳の割合が変わっていきます。返済額が変わらないので、知らないうちに割合が変わっているようでちょっと怖いですよね。実際は、借り入れ後に金利が確定した6か月分の「返済予定表」が金融機関から発行されます。返済予定表には返済額のうち元金とうち金利について金額が明記されていますので、確認するようにしましょう。

金利が上昇した場合、返済額のうち利息が占める割合が多くなります。これが、後に総返済額に影響を及ぼす可能性があります。

2.4 返済額の変動幅は従前の返済額の1.25倍まで

適用金利が変わっても返済額が急激に増加しないよう、その変動幅は従前の返済額の1.25倍までとなっています。

例えば、返済額を月々10万円で5年継続した後なら、どんなに金利が上昇しても上限12.5万円の返済額になるということ。その時の家計にはとても助かりますね。でも、不足している分があるなら、それはいつ払うのでしょうか。

2.5  金利が急上昇し、利息額が月の返済額より高くなると「未払利息」が発生

遂に、優しくない変動金利型の一面が出てきます。

返済額の中の元金と利息では、利息が優先的に支払われます。金利が急上昇して返済額と同額以上の利息額になった場合、元金には1円も充当されません。表1をご覧ください。ここでの設定は、借入額3000万円、返済期間35年、変動金利当初0.875%、1年毎に1%金利を上昇させています。

表1. 返済予定表

回数(回)毎月返済額(円)適用金利(%)うち元金(円)
うち利息(円)

借入残高(円)

未払利息(円)
備考
     30,000,000  
194,7790.87572,90421,87529,927,096  
(2~11略)
1294,7790.87573,49121,28829,121,630  
1394,7791.87549,27745,50229,072,353 適用金利変更
(14~47略)
4894,7793.8753,83990,94028,158,474  
4994,7794.375094,77928,158,4747,882適用金利変更
5094,7794.375094,77928,158,4747,882 
5194,7794.375094,77928,158,4747,882 
5294,7794.375094,77928,158,4747,882 
5394,7794.375094,77928,158,4747,882 
5494,7794.375094,77928,158,4747,882 
5594,779491893,86128,157,556 適用金利変更
5694,779492193,85828,156,635  
5794,779492493,85528,155,711  
5894,779492793,85228,154,784  
6094,779493393,84628,152,921  
(61 ~
略)
    

この時、超過した利息を「未払利息」と呼びます。

未払利息が発生すると、この間は元金を減らすことが出来なくなり、その後の返済計画に大きな支障をきたす恐れがあります。未払利息は追加の債務となり、将来的に分割返済、一括返済するなどして解消しなければなりません。解消方法は金融機関によって異なるので、事前に確認しておく必要があります。

「未払利息」、会いたくないですね。変動金利型の嫌な一面を見た気がします。毎月返済しているのに元金が減らないなんて残念過ぎます。「6年目から返済額は従前の返済額の1.25倍」と親切な上限を設定していますが、不足分は別途回収される訳です。問題を先送りしただけになりますね。

今回、表1の借入れ条件は毎年1%ずつ金利が上昇するという、急な金利上昇率の設定で未払利息を発生させています。現実味がないかもしれませんが、システム上この様なことが起こりうることは知っておいて損はないと思います。

3.変動金利型を選んで良いのはこんな人

「未払利息」は変動金利型を選ばなければ、会う可能性は0%です。でも、ここ30年間くらい変動金利は変わっておらず、実際、変動金利型を選択する人は50%を超えているほど人気があります。では、どういう人が変動金利型に向いているのでしょうか?

・10年以内など、短い住宅ローンを組む人

・今後、金利が少なくとも上がらないと考える人

・経済的にゆとりがあり、金利変動リスクが取れる人

・金利を読む力に自信があって、金利ウォッチする時間がある人

また、長期の住宅ローンを組んだとしても、繰り上げ返済をしながら返済期間を短くするなど、返済計画をしっかり立てて対策するのであれば大丈夫かもしれません。

4.まとめ

・変動金利は短期プライムレートに連動している。

・発表されている金利は、最大優遇金利であり、自分が適用される金利は審査次第で決まる。

・返済額は5年間変わらない。

・変動金利型住宅ローンでは、半年に1回金利が見直される。

・見直された金利で、返済額の中のうち元金とうち利息の割合が決定される。

・金利上昇により返済額が増加する場合、6年目から変わるが、従前の返済額の1.25倍までを上限とする。

・金利急上昇により、うち利息が返済額を超えた場合は未払利息が発生する。

・未払利息発生期間は元金も減らず、最終的に総返済額が増えることになる。

・変動金利型を選択する人は、短期返済で金利変動リスクが取れる人が向いている。

いかがでしたか?

金利が低いことが魅力の変動金利ですが、その特徴を知ると選ぶのを躊躇してしまいそうです。住宅ローンには変動金利型の他に「全期間固定金利型」「固定期間選択型」があります。それぞれの特徴を良く比べて、自分達の現状と将来に合った住宅ローンを選んでください。

住宅ローンは途中で止められません。変更する場合もお金と手間が掛かります。

つまり、はじめが肝心なのです。

住宅ローンが始まる前に資金だけでなく知識も備えましょう。

最後までお読みいただきありがとうございます。

このブログで少しずつ住宅ローンの理解を深めて、あなたの不安のない返済計画づくりにお役にたてたら嬉しいです。